2012年5月29日

第3回 Web時代のGIS技術勉強会に行ってきた #webgistec

5月25日 (金) に「第3回 Web時代のGIS技術勉強会」が開催されたので行ってきました。

第1回は2010年6月に開催。企業に所属している誰それというより、Web上における誰それ、 という感じで始まったそうです。 第2回は2011年3月11日に HTML5 と GIS (Geographic Information System) で何か、 という内容を予定していたらしいのですが、 震災の影響で会の開催は叶いませんでした。 その後に sinsai.info の立ち上げ、Hack for Japan との協力など、 Web と GIS の関係で目に見える成果が実現されてきた、という流れのようです。

今回はその次の回、という位置づけです。 通し番号で言えば3回目、実際の開催は2回目となり、自分は初参加です。

開催趣旨

オープンな地図データ、オープンな地図プラットフォーム、この2点について考えていきたい、という会の説明です。 地図だけで何かをする、というのではなく、システム全体のコンポーネントとしての地図、という位置づけです。

次に Open Street Map の説明。 みんなが持ち寄る、みんなで議論して地物にタグを付ける、レンダリング方法も自由に実装できるとのことです。 オープンなデータとオープンなプラットフォームが出会ったときに何ができるか? ということを検討したいですね、とのこと。

マップストリート -Tiled Map Revolution が生み出すもの-

タイル地図の説明がありました。 標準化されていなくて難しかったけど TMS のサブセットとして実装が進んだとのことです。 256x256のデータを管理すればOKなので、比較的分かりやすいと思います。 しかし、タイル同士の境界をどのように処理するか?という点は難しそうです。

続いて MapBox の紹介です。 CSS に似た記法の carto というものを使って地図の見た目を変更できます。 コードは Github の mapbox アカウントで管理されているようです。

地図を表示するときは何を「上」とするかは議論の種になりがちです。 実際、ノースアップ (北が上) ではなくヘッドアップ (進行方向が上) の地図を作るにはどうするか? という質問もありました。

タイル地図の場合だとクライアントサイド (JavaScript) でガリガリ頑張る、が一つの解になりそうです。

素材 (データ) と機材 (タイル地図) は簡単に揃うようになり、後は何を作るか? というフェーズになってきたと言えます。

融合するHTML5

まずはこちらの紹介。

Perfume のモーションデータ が BVH というフォーマットで公開されており、 これを使用して、 Perfume の動きを地図にプロットした そうです。 BVH の処理は JavaScript ですが C 言語のように書くらしく、Chrome Experiments で BVH Player が公開されています。

HTML5 はモバイル端末でも使えますが、端末によってコンテンツの処理を任せるアプリケーションは異なります。 コンテンツによって処理させるアプリケーションを選べるようにする仕組みとして Web Intents があり、ライブラリを使うことで割と簡単に実現できるそうです。 地図データを Google Maps で開くか Web ブラウザで開くか、それともその他のアプリケーションで開くか、 ユーザーに選択の自由を与えるのは大事なことだと思います。 (いちいち選択したくない、という人も多いとは思いますが)

「モバイル」というとケータイ電話が多いですが、 車載関係でも新しいテクノロジーの導入が進んでいます。 計器類のメーターには WebGL、カーナビは HTML5 を描画するだけ、というテクノロジースタックが 現実のものになりつつあります。

HTML5 ではありませんが、コンテンツを転送するプロトコルとして SPDY が台頭してきています。 SPDY は HTTPS が必須となります。 無線 LAN を使うときに通信内容を暗号化しておきたいからですが、 地図データなどを扱うときは、それが却ってキャッシュの課題にもなるそうです。 この辺は今後に考えていかなくてはならないことです。

Linked Dataと地理空間情報

続いて Linkded Data のことです。 WWW (World Wide Web) に対して GGG (Giant Global Graph) と呼ぶこともあるそうです。

GGG ではあらゆる「モノ」に対して URI を付与し、HTML ではなく「モノのデータ」が返ってくるそうで、 そのモノとモノの関係を表現するのが Linked Data です。 Linked Data で特にライセンスが「オープン」なものは Linked Open Data と呼びます。 データ形式は画像でも何でも構わないんだとか。

GGG の実現には今よりさらに多くのデータが公開される必要があります。 公開方法も画像よりは構造化されたデータの方がよく、たとえば CSV だと RFC で定義されているから便利です。 (実際は MIME が標準化されているだけで MS Excel とは違うけど、マシンリーダブルなのが大事。)

機械が処理しやすい形式としては "text/n3" があります。 コンテントネゴシエーションでクライアントが指定すると、サーバ側はその形式のデータを返してくれると嬉しいですね。 ちなみに Facebook も "text/turtle" に対応しており、 curl コマンドで実験できます。

ジオ系の LinkedData としては LinkedGeoData があります。 問い合わせ言語として SPARQL (Query Language for RDF) を利用できると、 ユーザーは同じ記述言語で複数サービスから緯度経度などを抽出できるはずです。 一方で、データプロバイダーは多様な出力に対応した API を実装しなければならず大変そうです。。。 データフォーマット変換プロキシ、のようなものがあると嬉しいのかもしれませんね。

Geo に特化した SPARQL (GeoSPARQL) も提案されているそうですが、現在もアクティブなのかは要確認とのこと。 RDB を SPARQL にマップするツールもあるそうです。 いずれにしても「LinkedData の作り方」みたいなノウハウが必要かもしれません。 これら2つの記事に書かれているかもしれません。 (よく読んでないけど)

OpenStreetMap 〜自由な地図をみんなの手に〜

OSM のマッパーのヒートマップとして Your OSM Heat Map が紹介されました。 マッパーの方々の紹介とともにマッピングエリアが表示されて新鮮でした。 日本だけでなく、外国のマッピングも実施しているそうです。 逆に、外国人でも日本のマッピングを進めている人もいそうですね。

OSM のライセンスは切り替え作業中で、 CC by SA は変わりませんが、データベースに関するライセンスを別途定めるらしく、 Open Database License (ODbL) を使うそうです。

企業としてOSMのデータを使うときはダンプデータを使うのがオススメとのこと。 プラネット からダウンロードできます。伸張すると250GB超くらいになります。

OpenStreetMapのタグにみる世界の記述

OSM の地物の「タグ」を集計してみた話でした。 OSM のタグがよく分かっていませんでしたので、雰囲気だけ感じられました。 統計情報はプロジェクトを紹介するときに分かりやすいので、 何かの資料作りの参考になりそうです。

名前通り "Street" のタグがズバ抜けている、というわけでもないようです。

Web(Map|GIS)の理念検討と、初期的実践としてのSVG Map

SVG で地図を描画していくための各種情報。

SVG に対して SVG Map は次の3つを追加するそうです。 既存の仕組みを流用できる点が嬉しいところです。

  1. 地理座標処理
  2. タイリング
  3. レイヤリング

現在は SVG 2.0 の仕様策定が進行中だそうです。 ここに svgmap を入れられると嬉しく、 wwwmap で webkit への実装を進めている模様です。

wwwmap is patch codes which adds mapping functions to webkit. This functions are based on the following member submission for W3C. (http://www.w3.org/Submission/2011/04/)

W3C の中の人も世代交代が進んでいるそうです。 ギーク -> スーツ -> ギークという流れで、最近はみんなバリバリとプログラムコードを書くんだとか。 ちょっと意外でした。

終わりに

「第3回 Web時代のGIS技術勉強会」に行ってきました。 特にまとまりはありませんが、スコープが広いために当然のことであり、 様々な知識を組み合わせる必要があるなぁ、と感じました。

地図データは画像なので組み合わせるのが大変、という時代もありましたが、 Google Maps 以降は Web サービスを使ったマッシュアップが隆盛を見せ、 今はちょっと落ち着いた時代とも言えます。

しかし、モバイル機器の高性能化と幅広い普及により、 ちょっと違った組み合わせ方が可能になるかもしれません。 HTML5 とその関連仕様は、これからもさらに追いかけていかないとなぁ、と思いました。

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